研究概要 |
平成18年3月に鳥居と小林が台湾を訪問し,台湾中央研究院地球科学研究所の洪崇勝博士の案内で台湾南部の二仁渓で極めて純度の高いグレイガイト試料を採取した.岡山理科大学では,MPMS高温炉で100℃から520℃まで20℃ごとに段階加熱し,各加熱ステップの後にX線回折分析を行った.また,特定の試料を同じ条件で多段階加熱する実験も行った.さらに,低温磁気特性,磁気ヒステリシス測定を必要に応じて行った.一方,高知大では対照実験として熱磁気天秤を用いて,空気中と真空中での加熱実験を行った. 結果としては,まずグレイガイトのキュリー点は従来多くの研究者が採用してきた330℃前後ではなく,380℃である可能性が高くなった.ただし,380℃という温度が磁気的相変態点であるキュリー点なのか,それともグレイガイトが熱分解されてしまう温度なのかは議論の余地がある.X線回折分析の結果では,グレイガイトは340℃での加熱後で間違いなく存在しているが,380℃での加熱後は検出されないという結果を得た.X線回折の結果はグレイガイトの熱分解を指示しているが,さらに詳しい検討が必要である.とくにグレイガイトの磁性が加熱条件(昇温率とある温度での保持時間)に支配されているように思える結果が得られているので,この点の検討が必要となってきた.この3月には高温X線回折装置を用いたin situの回折実験も行う予定である. これまでの結果は,昨年12月に高知大学海洋コア総合研究センターで行われた国際シンポジウム(Kochi International Workshop on Paleo-, Rock and Environmental Magnetism)で発表した.ここには共同研究者である洪崇勝博士が参加したので,様々な議論を行うことができた.さらにグレイガイト研究の第一人者である英国サザンプトン大学のA.P.Roberts博士も参加しており,極めて有意義な議論ができた.とくにRoberts博士からは,グレイガイトのキュリー点について.我々の考え方にたいする支持を得ることができた.
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