研究概要 |
研究全体の目的は、アマミノクロウサギとその近縁属全体が、予想以上にダイナミックに進化してきた様子を、系統進化と古生物地理の視点から解明し、あわせて、それらの属がアマミノクロウサギ族とよぶべきグループを構成することを示すことである。本研究はそのパート2で,アジア,ヨーロッパ,アフリカから知られる絶滅および現生の近縁属とPliopentalagus属との系統関係および古生物地理を、具体的に解明することを目的としている. 3年目(最終年)に当たる今年度は、大英自然史博において各種の現生標本とアフリカおよびアジアの化石標本の追加調査、ならびにアメリカの化石標本の追加調査を行った。平行して、ユーラシアと北アメリカのPliopentalagus属の拡散の時期と個体群を遺伝学的に説明する試みとして、中国とアメリカの学会で発表を行った。また、パート1の研究の成果として、中国のPliopentalagus属2新種の命名および進化傾向に関する論文が公表となった。 19年度に行った分岐学的分析では、外群としての原始属の形質が不十分だったため、大英自然史博で追加データを得て再度分析したが、結果は19年度のそれと大きく変わるものではなかった。その内容は19年度の報告書を参照されたい。なお、インド・シワリクのPliosiwalagus(Patnaik,2001)は独立属ではなく、Major(1899)の当初の記載通りCaprolagus属に含めるべきあることを、原標本の再調査で確認した。今後、全体の取りまとめとして、(1)アフリカのアカウサギ類3属5種とCaprolagus属の歯列についての古生物学的見地から見た詳細,(2)アマミノクロウサギ"族"の頭骨・下顎の詳細な骨学,および(3)それら全体の分岐分類学的解析とアマミノクロウサギ"族"の範囲の決定,の3本の論文制作を進める予定である。
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