環太平洋における中新世以降の淡水珪藻変遷史の解明と、それに基づく淡水珪藻生層序確立への基礎資料とすることを目的に、1)日本列島各地の湖成層層序の解明、2)日本列島と北米大陸の湖沼プランクトン珪藻化石試料の収集、そして、3)それら試料の古生物学的な解析を進めている。 研究協力者St. Cloud州立大学Matthew L. Julius氏の協力によって初年度に進め、後期中新世以降の生層序組立ての基礎となったCyclotella、Mesodictyon、Cyclostephanus、Pliocaenicus、Stephanodiscus各属の分岐分類に引き続き、初期〜中期中新世湖沼珪藻生層序の主要な構成種であるActinocyclus属各種の日本列島、北米大陸、中国南東部間での比較と、その成果の淡水珪藻生層序への反映を試みた。 壱岐島の長者原層、能登半島の山戸田層、日本海の大和堆から採取されたコアRCI2-394、宮城県の大内から採取した初期〜中期中新世淡水珪藻土約150試料より、Actinocyclus属5morphologic typesを識別した。それらは、湖沼プランクトン珪藻群集において、数%〜99%を占めた。北米大陸から採取された78試料に含まれるActinocyclus属10数種と日本列島産5 typesは形態上異なることが明らかになった。 この結果より、中新世初期〜中期におけるActinocyclus属の大発展は、日本列島においても確認され、この大発展が環太平洋でほぼ同時に起こったことが強く示唆された。この成果は、初期〜中期中新世湖沼珪藻生層序組立ての重要な基礎資料になるものと期待される。しかし、この成果をもって初期〜中期中新世の環太平洋湖成層おいて広域対比できる珪藻生層序を確立するには至らなかった。
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