研究概要 |
1998年から2000年における赤道太平洋暖水塊から中央湧昇域のラニーニャ現象時期に赤道太平洋で採取された4地点に設置されたセジメントトラップで捕集された試料について,最初に,暖水塊域と湧昇域での有光層上部・中部・下部での円石藻の優勢種の認定を行った.その結果,大きく3層に分かれることが判明した.一方,暖水塊域と中央水塊域では,3層の深度が異なることが明らかとなった.有光層下部に生息する円石藻の経年変化について分析を行った.その結果,有光層下部変動パターンが,既存の水温躍層深度(水温20℃等温線)の深度変化パターンと非常に高い相関関係にあることが判明した.また,セジメントトラップ試料の海域でラニーニャ時に採水された有光層鉛直水試料について,円石藻現存量,種の棲息深度の解析を行った.その結果有光層下部に生息するタクサは,水温躍層に相当する水温20℃と水温25℃の間に多産し,そのピークが常にこの水温範囲にあることが判明した.こらのらの結果は,従来提唱されてきたモデルと異なることが判明した.従来のモデルでは,水温躍層の深度が浅かったので有光層の上部と下部の円石藻群集が栄養塩の供給とよい相関をなしていた.それに対して,赤道太平洋暖水塊域は,水温が非常に高いため,成層化も顕著で,水温躍層も非常に深いことから,従来のモデルと逆の結果が認められた.これらの結果について,冬季に開催された日本古生物学会で口頭発表を行った.
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