研究概要 |
まず、ダナイト+H2O+Ni系での粒界拡散・粒成長(粒界移動)実験を行った。その結果、水の粒界拡散に伴い、粒界移動が促進されることが確認された。さらに超臨界水中にとけ込んだNiは、水とともにダナイト粒界に運搬され、Grain Boundary Sweeping過程(Nakamura et al., 2005)によりかんらん石結晶中に取り込まれる。そのNiの濃度プロファイルをEPMAにより測定し、Mishin & Razumovskii (1992)の2次元移動境界拡散モデルにあてはめることで、wetなダナイトの粒界拡散速度が、無水の系の値(Farver et al., 1994)に比べて1000倍程度速いことが明らかとなった(Nakamura & Ohuchi,2006年AGU Fall Meeting)。 またForsterite-Diopside系多結晶体の超臨界流体相(水)存在下での粒成長実験を行い、反射電子像から平均粒祭の時間発展を求め、粒成長則(d^n-d_o^n=kt:d,d_0,k,tはそれぞれ平均粒径・初期平均粒径・速度係数・時間)を決定した。さらに、実験産物(ダナイト・クライノパイロキシナイト・ウェーライト)の含水量を、顕微赤外分光法で測定し、粒界密度(粒径)に対する含水量を求めることで、単位粒界密度あたりの含水量を推定することに成功した(Ohuchi & Nakamura, 2007, Fig.3)。また、一の目潟などのマントル捕獲雁試料の岩石薄片を作成し、結晶粒界の観察に適した試料の選定を行った。
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