研究概要 |
岩石の鉱物粒径は高温高圧下における岩石流動を支配する重要なパラメターの一つである.粒成長は動的再結晶とともに地球内部における鉱物粒径を支配するプロセスの一つであり,岩石流動を理解する上で重要である.粒界移動に対してトレーサーとなりうる元素の分布を回収試料において観察することで,実騒期間内における粒界移動の様子を推定することが可能である.本研究では,高圧下におけるダナイト(かんらん石一相)の通常粒成長における粒界移動を,トレーサー元素の拡散を利用して観察する実験を行った.本研究においては,含水条件下において試料外部から内部ヘトレーサー元素(Ni)を拡散させることで,トレーサー元素が粒界に選択的に分布するようにした.実験は,ピストンシリンダー型高圧発生装置を用いて1200degC, 1.2GPa一定条件下で100-763時間の間行った.出発物質はMg-Si系のゲルを用いた.予め乾燥させておいた出発物質をPtで内張りしたNiカプセル(トレーサー元素の拡散源)に封入した上,1.0-1.5wt.%の蒸留水を加えて実験を行った.それぞれの粒界における,粒界を軸としたNi濃度分布から,全粒界の平均的な移動速度は2.3*10-6(um/s)と得られた(実験期間が763時間での場合).この値は,Ohuchi and Nakamura (2007)によって報告されている粒成長係数n (7.2)および速度定数k (108.48 um 7.2/h)から得られる平均粒界移動速度2.0*10-6(um/s)と良く一致している.このことは,実験期間内において粒界に掃かれた部分は回収試料中でNi(トレーサー元素)濃度の高い部分として識別されることを示している.
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