研究概要 |
本申請の目的は、円石藻類の殻の形態が光学的にどのような機能を持っているかを明らかにすることである。研究実施計画の各項目に対応する成果として 1については,これまで,天然の方解石結晶から,[0001],[10-11],等の面を切り出し,各面の赤外領域における吸収特性を測定し,吸収ピークのパターンに異方性があること,吸収特性はc軸に対して回転対称と見なすことができることなどを明らかにした..この結果を,実際の円石藻類のコッコリスに適用するため,Discoaster属の殻の赤外吸収パターンを赤外顕微鏡を用いて測定し,方解石単結晶の結果と比較した. Discoaster属の吸収パターンは,粉末法で測定した場合にもっとも強く吸収がみられる1500cm-1付近に現れるピークが2~3本に分離する. Discoaster属は、5ないし6本の腕が湾曲した傘の骨組のような形態をしており、c軸は傘の柄の方向である.したがって,[0001]面の吸収パターンでは,同様のピーク分離がみられること期待されるが,単結晶のパターンでは1500cm-1付近のピークは吸収が強すぎたため,確認することができなかった. また,この付近のピークが分離する現象は,非晶質な方解石の場合に報告されているが,円石藻類の殻に非晶質成分が含まれるかはさらに検討が必要であろう.
|