本研究の目的は、コンドライト隕石について、低温での小規模な初期部分溶融によって、どのような組織・組成のメルトが形成されるか実験的に再現・分析し、さらに、コンドライトからエコンドライトへの物質進化の初期状態を残しているプリミティブ・エコンドライトに見られる組織・鉱物組成と比較することにより、原始惑星の最初期に起こった分化過程を実験的にシミュレートし、物質分化の最初期の素過程を解明することである。始原的コンドライト隕石のチップを用いて、光学顕微鏡下で、加熱・溶融実験を行い、低温部分溶融メルトの形成に伴う溶融量の違いで、隕石組織やメルト組成がどのように変化するかについて、その場観察することが最も重要な実験である。この実験を行うためには、既設置の光学顕微鏡下で、部分溶融実験を行うための顕微鏡用真空加熱装置が必須であり、これを本研究費で購入した。この加熱装置は試料部を加熱するとともに、真空にすることが可能であり、この装置を光学顕微鏡下に設置し、初期的なセッティングを行い、所定の真空度と温度が達成可能であることを確認した。さらに、予備的な実験と装置の最適化を行った。酸素分圧を還元的にすることによる白金の劣化について、過去の実験による劣化程度の情報収集を行ったが、予想以上の劣化が確認できたため、今後、慎重に実験条件を決定する予定である。当面は、手持ちの始原的なコンドライト隕石のチップを用いて、予備的な実験も含めて、真空加熱実験を行う予定である。
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