本研究の目的は、コンドライト損石について、小規模な初期部分溶融によって、どのような組織・組成のメルトが形成されるかを実験的に再現・分析し、さらに、コンドライトからエコンドライトへの物質進化の初期状態を残しているプリミティブ・エコンドライトに見られる組織鉱物組成と比較することにより、原始惑星の最初期に起こった分化過程を実糊にシュミレートし、物質分化の最初期の素過程解明することである。 光学顕微鏡下で、部分溶融実験を行うための顕微鏡用真空加熱装置を本経費で購入した。H6コンドライト損石(Asuka881571)のチップを用いて、1150℃まで、真空条件下で加熱・溶融実験を行った。その結果、約1000℃で、まずFeSが周りの物質と反応し、徐々に部分溶融することが分かった。チップ試料を用いた場合は、粉末試料を用いた通常の溶融実験と比較して反応の進み具合が遅いことが予想されるが、一定温度をある程度保つことでゆっくりと反応が進み、また、FeSが周りの物質と徐々に反応していく。このようにまずFeSから反応が進んで行くことは、プリミティブ・エコンドライトに見られるような鉄分布の偏りと調和的な結果であり、初期の物質進化の研究に重要な示唆を与えるものである。 また、酸素分圧を還元的にすることによる白金の劣化については短時間の加熱ならばそれほどの劣化が起こらないようであるが、今後数多くの実験を重ねることによって、実験条件を決定する必要があると考えられる。しかしながら、真空条件下でも初期の物質進化について重要な示唆を与える結果が得られた。
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