研究概要 |
日本の第四紀アダカイトマグマの分布範囲を明瞭にするため、フィリピン海プレートの沈み込む関東から九州にかけての地域の第四紀マグマの地球化学的研究を行った。その結果、北東端は甲府北側火山群に属する黒富士岳であること、西南端は中部九州の九重火山が、アダカイトマグマの活動域であることを明らかにした。アダカイト分布域のうち、中部日本と西南日本ではマグマ発生のスラブ深度は70km程度で、世界の他の地域と類似している。しかしながら、九州においては120km以深である。九州ではフィリピン海プレートの沈み込み角度が他地域と比べ急である。このことは、鉛直方向の沈み込み速度が大きい事を意味し、これによりスラブの深度に対する温度上昇率の低下が起こり、より深い深度で部分溶融が起こったと考えることで説明可能である。もしそうであれば、スラブの部分溶融を規制する条件は、スラブの脱水反応を規制する圧力(Tatsumi, 1998 JGR)ではなく温度であると結論することが出来る。また予期せぬ成果として、黒富士周辺では現在はフィリピン海プレートの部分溶融がマグマ起源となっているが、後期中新世から鮮新世の間は太平洋プレートの脱水とそれによって起こったマントルウェッジの部分溶融が根本的なマグマ起源であり、さらにその初生マグマが地表まで上昇する過程でフィリピン海プレート由来の物質により汚染されたことが分かった。さらに、これらの研究を効率よく遂行することを目的に、新たに、半自動化した同位体分析技術の開発も行った。この分析技術については、すでにJMPSに公表した。
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