研究概要 |
平成18年度は,主に次の3点について実験,取り纏め等をおこなった. サブリキダスでのマグマの粘性係数と結晶組織の関係について,北九州アルカリ玄武岩についての測定をおこない,実験産物の結晶組織を解析し,論文を完成・出版した.この玄武岩ではリキダス相がかんらん石であり,次に晶出する斜長石との量比は結晶度が34%まで,ほぼ2:5である.このため結晶形態異方性の効果が薄められ,また結晶サイズが分散するために,全体としてEinstein-Roscoeの関係に近い粘性係数が得られた.さらに2006年噴出のハワイソレアイトを用いた粘性係数測定実験をおこなっているが,この場合は約1160℃でほぼ同時にかんらん石,斜長石,単斜輝石が晶出し,全体としてEinstein-Roscoe式よりも低めの粘性係数が得られている.これはさらに結晶の異方性の強い平板状斜長石の効果が小さくなっていて,結晶サイズ分布の分散によって低めの粘性係数を与えていると判断される. 富士火山の側火山である大室山噴出物の岩石学的検討をおこなった.これは約3000年前の噴火でサブプリニー式,ストロンボリ式,溶岩流出の噴出物は見出される.全岩組成はほぼ一様で,中程度に分化した高アルミナ玄武岩であり,864年貞観,1707年宝永玄武岩とは僅かであるが明瞭に異なる.結晶組織は初期のサブプリニー式⇒溶岩流⇒スコリア丘上部の順に石基斜長石が大きくなっており,その延長に864年貞観溶岩の斑状組織がある.ただ,大室山噴出物では斜長石は単純な正累帯構造を呈するものが主で,864年玄武岩の汚濁帯を伴う逆累帯構造を呈する斜長石斑晶と異なり,大室山噴火は中心火道から側方へ貫入したマグマがそのまま噴火したため爆発的であったと考えられる. この他,樽前火山1909年ドームの岩石学,カメルーンBana岩体の岩石学,中国アルタイ火山岩の岩石学的検討等をおこなった.
|