(1) 比較岩石学的検討:富士火山大室山噴出物について、全岩化学組成、鉱物組成、結晶サイズ分布等を測定し、A.D.864年貞観、A.D.1707年宝永噴出物と比較した。貞観玄武岩は斑晶量20-30%で斜長石斑晶はいったん脱ガスに伴って晶出した後、高温高含水マグマの混合を受けて噴火している。大室山噴出物は斑晶に乏しいが微斑晶サイズの斜長石が晶出しかかった段階で噴火に至っており、地下から上昇・側方貫入・脱ガスしながら、そのまま地表に達し爆発的〜溶岩流出の噴火を生じたと考えられた。 (2) マグマ混合に関するアナログ実験:雲仙岳1991年噴火をモデル化するために、低レイノルズ数での管流系でマグマポケットの存在で層流不安定でマグマ混合が促進される条件をアナログ物質を用いて検討した。重力と粘性力の比をとった無次元数Iが0.1以下で層流不安定が生じてマグマ混合が促進されることが示され、雲仙でのマグマ系に適用すると、マグマポケットの存在がマグマ混合を促進することが示唆された。 (3) 火砕噴出物の含水量に関する検討:浅間火山の火砕物の含水量をカール・フィッシャー法で測定したところ、1783年、1108年噴出物は0.3-0.7wt%であるのに対し、1.3万年前の小諸火砕流、嬬恋降下軽石等は1.5-3.5wt%と高い含水量を有する。高含水量のガラスはBSE像で水和の組織を示しておりその影響を受けた。 (4) サブリキダスでの粘性係数測定 A. ハワイキラウエアソレアイト溶岩についての実験:晶出相は主に単斜輝石と斜長石であり、相対粘性係数はEinstein-Roscoe-Marsh式とほぼ一致する。これは結晶形状とサイズ分散の効果が打ち消して生じたと考えられた。 B. 海嶺玄武岩についての実験:晶出相は同じく主に単斜輝石と斜長石であるが、相対粘性係数はE-R-M式と比べると5倍程度大きくなった。これは斜長石の軸比が大きいことが影響したと考えられた。
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