研究概要 |
ハワイのカンラン石中に含まれるメルト包有物のうち,直径100μm以上の試料では,イオンプローブにより複数の分析点からデータを得ることが可能である.このような大きなサイズのメルト包有物に対して複数点Li同位体分析を行った結果,不均質な同位体組成が示された.このような不均質をもたらす要因として,以下の可能性が考えられる.1,メルト包有物に含まれる鉱物を溶かして,均質な組成のメルト包有物を得るために前処理として行う加熱処理の際に,Liが揮発した上に気相とメルト間において大きなLi同位体分別が起こった.2,メルト包有物中のLiがホストのカンラン石側に拡散し,同位体的な不均質が,メルトのトラップ後にもたらされた.3,サブマイロメートルオーダーでのLi同位体組成における不均質がもともとマントルにあった.前処理における加熱処理を行う必要のないメルト包有物を使えば,これまでの研究において観察された一つのメルト包有物中のLi同位体組成に不均質をもたらす原因がこれら3つの仮説のどれが主たるものか明らかにすることができる.現在,アイスランドの玄武岩類に含まれるメルト包有物には鉱物包有物は認められず,加熱処理なくして同位体分析を行うことが可能である.したがって,次年度には,加熱処理によってLi同位体組成が変化してしまうのかどうかを,アイスランドの試料を使って評価する.この結果に基づいて,予定していたハワイの試料からアイスランドの試料に変更すべきかどうか検討し,当初の研究課題を遂行する予定である.なお,試料の変更を行わなければならない場合は,アイスランドの全岩試料のLi同位体分析を行うことを新たな課題として加える.
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