本研究の目的は、固体圧式3軸変形試験機を用いた蛇紋岩の変形実験を通じて、稍深発地震の発生過程とその発生メカニズムを明らかにすることである。本年度に行った研究の概要は以下の通りである。 蛇紋岩の安定領域において定歪速度実験を行った。実験試料には長崎変成岩中のアンチゴライト蛇紋岩を用いた。この蛇紋岩には片理面が発達しており、片理面に垂直な方向から直径約7.0mm×高さ約7.0mm、および、直径約3.0mm×高さ8.0mmの大きさの円柱をくりぬき実験試料とした。実験条件は、封圧1 GPaと3GPa、温度は450℃-700℃、歪速度は2.0-2.4×10^-5/秒とした。 得られてた流動応力は、1 GPaの封圧条件において、450℃で約1070MPa、500℃では約960MPa及び約1200MPa、550℃では約830MPaと1080MPaである。また3GPaの封圧条件においては、600℃では約2100MPa、650℃では約1300MPa、700℃では約845MPaである。この結果は、封圧500MPa以下の条件で行ったRaleigh and Paterson(1965)の蛇紋岩の変形実験の結果と調和的である。すなわち、同じ温度条件では封圧の増加にともない流動応力は増加し、また、同じ封圧条件では、温度の上昇にともない流動応力は低下する。そして特徴的な事は、封圧が増加するに従って、流動応力の温度依存性が著しく大きくなる事である。これは、変形のメカニズムがパイエルス機構から転位クリープへ変化している為と考えられる。
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