研究課題/領域番号 |
18540482
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
清水 洋 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60090544)
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研究分担者 |
高橋 嘉夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10304396)
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キーワード | レニウム-オスミウム系 / 酸化還元状態 / 固相-液相反応 / XAFS / モリブデナイト / 局所構造 |
研究概要 |
187Re-187Os放射壊変系(半減期4.2×10^<10>年)は、ReとOsは双方ともに酸化還元状態に応じて価数が変化するために、地球表層での地球科学的過程におけるRe/Os分別が大きく変化する。Re-Os系のこれらのユニークな地球化学的性質を反映して、海洋環境におけるOs同位体比の時代変遷は、大陸/海洋の分布の時代変遷や地球表層環境の変遷を記録していると考えられている。しかし、海水-堆積物系におけるReとOsの分別素過程に関しては充分な理解がなされていない。この点に着目し、本研究の初年度の18年度では、異なる酸化還元条件下において海水-堆積物間でのReとOsの取り込みを実験的に調べた。そして、酸化還元条件の異なる海洋堆積物・堆積岩等の187Re/188Os比変動は堆積物にReが取り込まれるか否かによって支配されていることが明らかとなった。 本年度は、放射性起源のOsの化学的挙動を解明するために、モリブデナイト(硫化モリブデン)においてReから放射壊変したOsの局所構造をXAFSから検討した。OsはモリブデナイトにおいてOs相を形成せずにMoサイトを占めているが、Os-Sの原子間距離はMo-SやRe-Sの距離よりも短いことが分かった。また、Os(IV)のみではなくOs(III)としても存在していることも示された。これらの局所構造は、モリブデナイト中でOsの拡散がReよりも大きいことを示唆しているとともに、放射性起源と初生的なOsが風化作用等の固相-液相反応において異なる挙動を示す可能性を示唆する重要な結果である。固相-液相反応における微量元素の挙動とその原子レベルでの局所構造との関連の研究は、希土類元素のYとHoの水溶液と炭酸カルシウムの分配研究についても発展させ、新しい研究分野を切り開いた。
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