研究概要 |
まず、理論計算を中心として、大気圧プラズマの励起状態密度分布の特徴を調べるため、アルゴンプラズマの衝突輻射モデルを用いて、励起状態数密度を、電子温度・密度、ガス温度・圧力の関数として計算し求める。EEDFはマックスウェル型とした。低電子密度(〜10^<11>cm^<-3>)の電離進行プラズマを対象とし、励起準位の流入出につき支配的素過程を検討した。実験測定の容易な励起温度のみからでも電子温度T_eを求める可能性を調べるべく、電離進行大気圧アルゴンプラズマの励起状態数密度をCRモデルで計算し、T_eの関数として4p-5p準位対に関するT_g=1500Kの時のT_<ex>を求めた。T_<ex>(4p-5p)の依存性はN_eの値により2つのグループに分かれることが判明した。低N_eで中性粒子衝突が支配的なグループ(N_e【less than or equal】10^<12>cm^<-3>)と、高N_eで電子衝突励起が原子衝突過程と同程度のグループ(N_e【greater than or equal】10^<13>cm^<-3>)である。グループ内ではT_<ex>のN_e依存性は小さく、N_eの粗い推定値を用い、T_<ex>からT_eを推定可能と考えられる。一方T_<ex>のT_g依存性は高N_eでは殆どないが、低N_eでは顕著であることが判明した。この場合、他の方法(例えば回転温度)によりT_gを推定し、そり後T_<ex>測定からT_eを推定するという手順が考えられる。 次に、実際の大気圧マイクロ波放電アルゴンプラズマを対象として、実験により上の方法のアルゴンプラズマに対する適用可能性を研究した。放電に用いた装置は同軸型マイクロ波(2.45GHz)プラズマトーチで、プラズマ生成ガスを純アルゴン、流量10slm,マイクロ波投入電力を150Wとして定常放電を行った。今回は放電プラズマの内、もっとも明るく発光するトーチ内部の部分に注目し、下流End-On方向からプラズマの発光を観測した。使用分光器には標準光源を使用して相対波長感度校正を施している。実際のプラズマは、マイクロ波の照射される放電管内部に生成されるので、電離進行プラズマと考えられる。当該プラズマの中性気体温度は、回転温度で近似できると考えられ、このパラメータを適用してCRモデルを適用し、本研究で検討した理論により電子温度を検討した。その結果、4p-5pの準位密度分布で決定される励起温度(0.38eV)と電子温度との関係から、今回計測した大気圧マイクロ波放電アルゴンプラズマの電子温度は0.9(±0.1)eV程度と推測された。
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