研究概要 |
本年度は,液体を媒質とした場合の放電に着手し,水面上のバリア放電,ならびに,ピペット内単一気泡内における放電実験を行った.また,マイクロバブル発生器を用いて生成したバブル水中での放電にも着手したが,水中よりも水面での沿面放電が支配的となったため,装置改良を行った.以上の実験により,水表面が電子を吸収し,低電圧での放電維持のためには,金属表面や金属微粒子が水面と同時に存在することが必要であることが明らかになった.一方,媒質をエタノールとした場合に,以下のように液体中での持続的な発泡現象とそれに伴う放電が観測された.実験は,多孔質テフロンチューブ(ポア〜約1μm)で被覆された直径1/4インチのステンレス棒をエタノール中に浸し,周波数10kHz, P-P電圧10kV, Duty 50%の矩形波を印加して行った.電圧印加直後は放電せず,液温上昇のみが観測された.約2分後に平均液温が約70℃に達すると,金属棒近傍で泡発生と発光が観測された.発光の起源を明らかにするために,発光分光スペクトルの測定を行ったところ,HaとFeの発光が観測された.Haの発生はエタノールの解離を意味し,Feの発生は放電領域が金属棒と接していることを意味しており,多孔質膜を経て膜・金属界面に供給されたエタノールの熱による気化とその放電が生じていると考えられる.また,発光は金属棒に負電圧が印加されているときだけ観測されており,放電によって生成された正イオンによって金属棒から二次電子が放出されることにより負電圧印加時の放電が維持されているものと考えられる.水の場合にも,水温が気化温度(100℃)近くになるが,撥水性ではない多孔質チューブ(多孔質シリカ等)を用いることで,同様の持続放電が水中で可能となると予測される.これにより,当初の目標である発光デバイスへの応用に加えて,液中元素分析,水質浄化などの応用にも適用可能になると考えられ,次年度の研究を推進するための基礎ができたと考えられる.
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