従来、殆どの理論モデルは金科玉条の如く電荷中性を仮定してきた。換言すると、ポアソン方程式を使わず、代わりにポルツマン関係を天下り的に使用してきたと言える。しかし、それではプラズマ最外域にあるイオンが真空中の電子によって作られる強い電場で加速される物理現象は決して正確に記述できない。本研究では最近発見されたポアソン方程式をセルフコンシステントに解いて得られる厳密解を拡張・駆使してイオン加速のメカニズムを明らかにした。 まず電荷中性近似を用いて有限質量プラズマの真空中への膨張を記述する理論モデルを構築した。このモデルの新規性は、それまで殆どの理論が半無限平板の一様プラズマに対する記述に終始していたのに対し、円筒および球幾何形状の下でのプラズマ膨張を記述している点にある。更にこの理論モデルから予測されるイオンエネルギースペクトルを、2つの異なる研究機関から報告された実験結果と比較した結果、高い精度で一致する事を示した。 上記の如く従来のモデルでは、電荷中性を仮定してプラズマの振る舞いを記述してきた。換言すれば電子密度に対する良く知られたボルツマン関係を天下りに遵守し、ポアソン方程式を排除してきた。ところが最近、本申請者等はポアソン方程式を考慮した系でのプラズマの真空中への膨張を記述する厳密な自己相似解が発見した。これにより、従来不明であった真空中の電子密度分布や最外イオンの位置、さらには最大イオンエネルギーを定式化することができた。
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