平成18年度はパソコン、プリンター、プロジェクター等の機器を購入し、研究環境を整えるとともに、暗黒エネルギーの模型として、アインシュタイン重力を修正した重力の模型について主に調べた。特に、場の理論の作用がスカラー曲率の適当な関数になっている模型と作用にガウス=ボンネ項を付け加えたような模型について詳しく調べ、宇宙の複雑な時間発展を再現するような模型を実際に構成できることを示した。これらの模型は超弦理論との関連が深い。超弦理論は10次元時空の理論であるが、われわれが観測する時空は4次元であり、それを説明するためにコンパクト化やブレイン世界のシナリオが考えられている。もしこの世界が超弦理論によって記述されるとすると暗黒エネルギーの模型は超弦理論におけるコンパクト化やブレイン世界の情報を含んでいるはずであり、暗黒エネルギーの模型と超弦理論との関係を明らかにしようとしている。現在、宇宙の観測技術が急速に進み、宇宙論が極めて精密化されており、観測で得られたより細かい制限を満たす模型を選別しようとしている。 これらの成果に基づき、平成18年度には8月以降5つの論文が書かれ、そのうち3つが既に学術雑誌に掲載されて1つが掲載決定となっている。また、研究代表者野尻の共同研究者であるS.D.オディンツォフ氏がこれらの研究成果を2つの国際会議で口頭発表した。その発表内容は研究代表者野尻との共著でプロシーディングスに掲載される予定である。これらの研究は国際的にも注目され最初に発表された論文は既に30以上の論文で引用されている。
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