研究課題
特別研究促進費
人類有史上過去2000年間で発生が確認されている9つの超新星爆発の痕跡探査および太陽活動の周期性解析ため、南極氷床コアのイオンクロマトグラフィーによるイオン濃度分析を、研究代表者である五十嵐が中心となり、理化学研究所で独自に実施できる体制を確立した。その結果、共同研究として国立極地研究所に分析を依頼してきた昨年度までと比較して分析速度が飛躍的に向上し、記録に残る超新星爆発の痕跡を十分議論できる過去2100年分のイオン濃度分析を終えることができた。本研究を始めるに際し先行して行った西暦950年〜1150年のイオン分析結果では、西暦1006年の超新星爆発と1054年のカニ星雲超新星に対応する硝酸イオンスパイクの存在を確認していたが、今回得た新しい分析結果の中にも、残り7つの記録に残る超新星爆発に対応する硝酸イオンスパイクの候補を検出することができた。人類有史上で確認されている過去2000年間の超新星9つを全て検出できたので、次年度以降さらに時代を遡り、最終的には後氷期全体約10000年間の氷床コア分析を行うことによって、まだわかっていない我々の天の川銀河における超新星爆発率を推定する道筋をつけることができた。本研究は雪氷学と天文学の研究者が連携して実施する新領域の研究で、萌芽的な側面が多分に含まれている。今年度は入手したイオン濃度データを精査するのに費やしたため、これまで論文などの研究成果が出ていないが、西暦1006年の超新星とカニ星雲超新星に関する研究論文および西暦950年〜1150年の太陽活動周11年を確認した研究論文について研究分担者である望月によってNature論文が進行中である。