研究概要 |
NMRは、ある特定の原子核の共鳴線の位置(化学シフト)と分裂状態(スピン結合)を調べることによって、その原子核のまわりの電子構造を解明する分光装置である。今日、NMRの応用は、多岐にわたっており、使用される原子核も、従来の^1H,^<13>C核の他に、種々の核種におよんでいる。しかし、とくに重い原子核を含む系では、実験スペクトルのみで化学シフトやスピン結合定数などのNMR定数を決定することは容易ではない。このような系では、類似した化合物でもNMR定数が大きく異なっており、経験則が適用できないからである。そこで、NMR定数を量子力学に基づいて正確に計算し、測定したスペクトルと比較することが必要となる。原子番号が30以上の重い原子を含む分子では、化学シフトやスピン結合定数に相対論的効果が現れる。そこで、相対論的効果を含んだN定数の量子化学計算を行うことが必要になる。本研究の目的は、NMR定数の相対論的効果を計算することである。
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