π電子共役分子の光化学的挙動は多様性に富み、レーザー分光学などの基礎的実駿科字分野に止まらず、光機能性材料などへの応用など工学的な分野における研究も盛んに行われている。しかしながら、それらの中には合理的な解釈がなされていないものも多い。そこで、本研究課題では、光記録素子としての期待の高いジアリールエテン類の光化学反応を対象とし、高精度の非経験的分子軌道計算により理論的に検討した。また、本反応同様に骨格緩和が重要であると考えられるアズレン類についても検討した。本年度の研究実績は以下の2点である。 1)ジアリールエテンの光環化反応における円錐交差構造(CIX) H18年度に求めたジアリールエテンの光環化反応におけるCIXに関して、CAS空間や基底関数による依存性を検討した。これにより、今後、反応座標解析など、本反応過程の詳細を検討するために必要な計算方法を確定することができた。 2)アズレン類のS_1-S_0内部転換過程に関する理論的予測 テーマ1同様、分子π共役系の骨格緩和が重要と考えられるアズレンの内部転換過程において、CIX近傍におけるアズレンの7員環部分の非平面化と実験結果との関連性についての合理的解釈を行った。さらにその傍証として6-シアノアズレンの内部転換過程について検討し、シアノ基による本反応過程への影響を理論的に予測した。
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