金属や酸化物と氷との界面や氷の表面おける化学現象を研究することは電気化学や触媒化学を理解する上で重要なだけではなく、近年では高層大気中や宇宙空間中の氷表面での化学反応を理解するためにも重要な課題となっている。本研究では和周波発生法をプローブとして用いて、超高真空中の金属単結晶表面に製膜した氷薄膜の最外表面もしくは氷/金属界面の超高速ダイナミクスを、ピコ秒ポンプパルス照射による時間分解測定から明らかにすることについて取り組んだ。本年度においては従来の時間幅35ピコ秒のモードロックヤグレーザーを用いた測定を、3ピコ秒のチタンサファイヤレーザーシステムを用いて行なった。近赤外ポンプパルス(波長800nm)照射下の氷/白金界面の時間分解観察から、白金の表面を近赤外ポンプパルスで加熱すると吸着した氷の和周波発生スペクトルが過渡的に変化することを見出した。このスペクトルを解析することにより、加熱された白金表面から各振動モードにエネルギーが分配され、200ピコ秒より短い時間領域では各振動モードが熱的に非平衡であることを明らかにした。この現象はH_2OとD_2Oで同様に起こることも確認した。これらは、界面のエネルギー伝播過程が複数あることを示すものである。また、本予算でクライオスタット冷却機を導入し、クライオ温度での実験が可能なように装置を改良し、より高エネルギーのポンプパルスを用いた実験が可能となった。本装置を用い、近赤外ポンプパルス照射下の氷/金属界面での小分子の脱離・溶解ダイナミクスについて次年度以降取り組む。
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