半導体の性質を示す不均一系無機光触媒の表面は、しばしば光で誘起される酸化還元反応において興味ある反応場を提供する。例えば、水溶液中における酸化チタン(TiO_2)からは、UV光照射によりヒドロキシルラジカル(・OH)やスーパーオキシドアニオンラジカル(O_2^-)が発生し、様々な物質の酸化反応に寄与する。一方、磁場はラジカル対が存在する反応において、反応の選択性や速度に大きな影響を与える場合がある。今年度の研究では、まずTiO_2、バナジン酸ビスマス(BiVO_4)、酸化タングステン(WO_3)の各光触媒にAg、Ag_2OおよびAg0粉末を担持した銀担持型光触媒を調製し、O_2^-発生量の条件検討を行った。続いて、100ガウス以下の低磁場を発生するコイル型電磁石を組み込んだ化学発光測定装置を新たに製作し、光触媒反応初期過程において水中の溶存酸素が過酸化銀を担持したBiVO4_(AgO-BiVO_4)で還元されて発生するO_2^-量の磁場効果を検討した。 銀担持型光触媒について、ルミノール注入後の化学発光強度を調べたところ、AgとAg_2Oの場合、化学発光の増加はわずかであるが、AgOでは大きく増加することが分かった。この化学発光は、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の添加によって完全に消失することから、AgO担持によって各光触媒から発生するO_2^-量が大きく増加することを明らかにした。中でもAgO-BiVO_4が最もO_2^-発生量が大きいことが分かった。次に、AgO-BiVO_4光触媒について、pH依存性とAgO担持量依存性を検討したところ、pH12、担持量2wt%でO_2^-量が最大となることを明らかにした。続いて、2wt%AgO-BiVO_4を用いて100ガウス以下の低磁場領域でO_2^-発生量を検討した。しかしながら、この光触媒から発生するO_2^-量に磁場効果は認められなかった。
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