研究概要 |
ペプチド分子ミクロ水和クラスターである、N-tert-ブチルフォルムアミド(NtBF)およびN, N-ジメチルアセトアミド(NNDMA)の水錯体を中心に研究を進めた。 NtBF-水錯体では、1:1錯体のアイソマー2種と、1:2錯体1種を観測した。同位体置換水分子錯体の測定も行い、決定した回転定数を用いて配位構造を求めた。1:2錯体は、水ダイマーがNtBFのCHO部分に結合して環状の水素結合ネットワークを形成していることがわかった。また、1:1錯体では、メタノール錯体の測定も行い、水錯体と同様の構造が安定であることを確認した。ペプチド分子内のN原子の核四重極子結合定数の変化から、水素結合形成によるC-N結合の二重結合性の増加が期待される。NtBF-フォルムアミド錯体の観測にも成功し、現在研究を進めている。 NNDMAでも、CHO部分に結合した1:1水錯体を測定できた。NNDMAは分子内の3つのメチル基が内部回転運動による分裂を起こしている。解析から、水分子が配位することにより、全てのメチル基で内部回転障壁が若干低くなるということが判明した。このことは、ペプチド鎖からなるタンパク質の高次構造形成において、水分子が糊の役割だけではなくペプチド鎖の柔軟さを助長していることを意味していると考えられる。この分子の場合も核四重極子結合定数の変化からC-N結合の二重結合性の増加が予想され、内部回転障壁の低下と関係していると思われる。 また、やはり生体関連分子である乳酸メチルとその水錯体の観測も行い、分子内水素結合と水和における水分子の水素結合の競争・協調に関して興味深い知見を得た。 以上の成果の一部を下記の学会において発表し、現在学術論文として投稿する準備を進めている。 1.本江、藤竹 分子構造総合討論会(2006)4PO91. 2.尾本、本江、大橋、藤竹 分子構造総合討論会(2006)4PO92,
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