円筒内に閉じ込められたパラ水素分子集合系の経路積分セントロイド分子動力学(CMD)シミュレーションを行った。この体系はカーボンナノチューブ内の水素に対するモデルであり、その内部にある水素分子の量子ダイナミクスを調べるためのプログラムを開発した。炭素原子-水素分子間の分子間相互作用には既に物性評価に用いられ性能が信頼できることがわかっているCrowell-Brownポテンシャルを用い、カーボンナノチューブ炭素骨格はシリンダー状に固定し炭素原子間の変形は導入しないこととした。また、シミュレーションは単一のチューブ炭素骨格についてセルを設定し、軸方向に周期境界条件を課した。水素分子間相互作用には、また本申請者らが継続して用いて静的・輸送的諸量に正確な結果を与えてきた、Silvera-Goldmanポテンシャルを用いた。統計アンサンブルはカノニカルアンサンブルとし、Nose-Hoover chain型の熱浴を分子系に接続した。この系に対してCMDシミュレーションを実行し、水素分子のファインマン虚時間経路の分布(観測量)やファインマン・セントロイド(半古典的自由度)のトラジェクトリーを計算した。虚時間経路のTrotter分割数は100にとり、CMDトラジェクトリーは各ランあたり計約100ピコナノ秒以上のオーダーまで計算した。時間可逆性が保証されたRESPAアルゴリズムによるnormal-mode CMD法を用いて計算した。トラジェクトリーから時間平均としての熱力学的物性および空間分布関数を求め、基本量の解析をスタートさせた。
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