研究課題
基盤研究(C)
一様な円筒内に閉じ込められたパラ水素分子集合系の経路積分セントロイド分子動力学(CMDシミュレーションを行った。この体系はカーボンナノチューブ内の水素に対するモデルであり、その内部にある水素分子の量子ダイナミクスを調べるため平成18年度に開発したプログラムをさらに修正変更してシミュレーションを行った。炭素壁と水素分子間の相互作用モデルには、原子間相互作用点同士に働くCrowell-Brownポテンシャルを用いる18年度のやり方をやめて、水素分子と壁の間に働くポテンシャルは、Lennard-Jones相互作用にもとづく均一な壁からの一様なポテンシャルに変更した。カーボンナノチューブ円筒は均一なシリンダー状に固定し、z軸方向にAndersen型の定圧法を導入、また系に対してNose-Hoover chain型の定温法を導入した。なノーチューブ円筒の変形は導入しないこととした。水素分子間相互作用には、Silvera-Goldmanポテンシャルをそのまま継続して用いた。統計アンサンブルは定温・定圧アンサンブルとした。チューブ内に充填した分子数312個、温度8K-15Kのパラ水素系に対してCMDシミュレーションを実行した。虚時間経路のTrotter分割数は100にとった。円筒に対して垂直(z軸方向)および動径方向に分割した、セントロイドの平均自乗変位、速度相関関数の解析により、系内の水素分子の運動論的な異方性が明らかになった。また充填したパラ水素はバルクに比べて同温度では融解しにくいこともわかった。
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固体物理 41巻(11号)
ページ: 831-840
Solid State Physics("Kotai Butsuri", in Japanese) 41(11)