本年度は現有するSFG計測装置に、別途設置した光パラメトリック発振/増幅装置、及び紫外励起光発生のための二倍波発生装置を取り付け、赤外光との時間的・空間的同期を取るように光学調整を行った。本年度は、まず可視領域の波長可変化を目標としてシステムを再構築をおこなった。さらに測定できる赤外領域のワイドレンジ化を行い、1000cm-1までの低波数領域でのSFGの測定を可能にし、4000から1000cm-1の広い領域でSFGの測定が可能となるようにシステムの再構築を行った。このSFG測定装置を用いて、側鎖構造を変えた種々の水溶性-疎水性ブロック共重合体の表面構造を測定し、末端基置換による表面構造、それに由来する表面物性についての定量的な検討を行った。また刺激応答性高分子ポリ(イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)表面及び水中での温度変化による界面での高分子の分子構造の温度応答性を内部全反射SFGで観測した。定量的な解析により側鎖イソプロピル基の配向を決定し、温度による界面の親水化-疎水化の挙動が、下限臨界溶液温度以上での疎水基のバルクへの潜り込みによって引き起こされるのではなく、PNIPAM/水界面での水和一脱水過程により起こっており、主として隣接した高分子鎖の分子間の水素結合形成によって引き起こされる主鎖の構造変化によって引き起こされていることを突き止めた。また、ワイドレンジ化した赤外領域を利用し、1200〜l000cm-1の低振動数領域のSFG測定を試みた。対象としては常温で液体であるイオン性液体を取り上げ、[BMIM]OTf、[BMIM]TFSIや、アルキル鎖長を変えた種々のイオン性液体の表面構造について、それまで不明であった表面でのアニオンの挙動を解明し、その特異な表面構造を明らかにした。さらにこれまで幾つかの構造が提唱されていた硫酸水溶液について、表面での酸解離はバルクとはほぼ等しいがその配向はバルクとは全く異なることを明らかにした。これらの結果については、2006年9月のアメリカ化学会での招待講演、2006年12月の分子研研究会での招待講演などで発表を行った。
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