研究概要 |
近年,21世紅型社会生活を根底かも支える材料開発を指向して,光や電子的刺激に対して敏感に応答し特定の仕事をすることができる機能性分子の創成やそのシステム化に関する研究が活発に行なわれている。申請者らも,さまざまなデバイスや機能性素子の基本単位となる分子サイズからナノサイズに広がる色素オリマーの構築を行ない,それらの光学的電子物性を解明して来ている。本研究では,これまでの研究をさらに発展させ,光合成や呼吸機構に中心的な役割を果たす色素,光や電子的刺激に対する高感度色素であるポルフィリン環から成る新しい型のオリゴマーとして,ナノサイズを念頭に置いた大型ポルフイリン六量体の構築を行ない,それらの分子構造と光学的電子物性との関係を解明することが目的である。各ポルフイリン環を連結する架橋基として、それぞれに特有の性格をもつエチレン、ビニレン、及びジアセチレン結合に注目し、それらを通した新たな電子的相互作用の本質に焦点を当てる。その中で、本年度は、ビニレン架橋オクタエチルポルフィリン(OEP)三量体をエチレン結合で二量化させた六量体の合成研究に着手した.その結果、本六量体のみならず、全ての当該研究の前駆体となるOEP三位体のアルコール誘導体の合成経路を確立することに成功した。当該六位体の合成に向け、現在、大量合成の段階に入った。一方、その前駆OEPアルコール三位体について、興味深い構造特異性が見出された。すなわち、ビニレン架橋OEP三位体の中央ポルフィリン環に置換基を導入すると、ビニレン部を含む両端のOEP環の性質が異なるという現象が観察された。このことは、中央ポルフィリン環のメソ位が3置換体となることによって周辺エチル基との立体障害が高まり、架橋部周辺での回転運動の自由度が低下し、分子構造に非対称化が起ったことを示唆しており、その原因や理由を精査している。
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