研究概要 |
本年度は,ビシクロ型カゴ状分子の合成を目的とした研究を立ち上げ,その構成単位となるトリス(5'-エチニル-[2,2']-ビチエニル)メチルシランの合成を検討した.最初に,2,2'-ビチオフェンとトリクロロメチルシランからトリス([2,2']-ビチエニル)メチルシランを合成し,続いてトリブロモ化を検討したが,中心のSi-チオフェン環結合の開裂が同時に起こり,目的のトリブロモ体を得ることはできなかった.そこで,まず5-プロモ-2,2'-ビチオフェンとトリメチルシリルアセチレンをSonogashiraカップリングさせて5-トリメチルシリルエチニル-2,2'-ビチオフェンを合成したのち,トリクロロメチルシランとの反応によりトリス(5'-トリメチルシリルエチニル-[2,2']-ビチエニル)メチルシランを得た.末端トリメチルシリル基を除くため,テトラヒドロフラン-メタノール中炭酸カリウムを作用させたところ,再び中心のSi-チオフェン環結合の開裂が起こった.これはやや予想外の結果であり,フェニル置換体では通常見られないことから,チエニル基が置換されたシラン誘導体に特徴的な性質と言える.種々条件を検討したところ,THF中-78℃でちょうど3当量のテトラブチルアンモニウムフロリドを短時間(数分)させることで選択的に脱トリメチルシリル化が行えることがわかった.さらに,得られたトリエチニル体のカップリング反応によるカゴ型分子の合成を検討したところ,低収率ながら目的化合物の生成を確認した.
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