研究課題
基盤研究(C)
ペンタセンに代表されるアセン類は、代表的なp型有機半導体であるが、通常の溶媒に難溶であるためデバイス作製には真空蒸着を必要とする。我々は溶液プロセスによるデバイス作製を可能にするため、光により変換可能なアセン類の可溶性前駆体を設計した。これまでにペンタセンのジケトン前駆体を合成し、光照射によりほぼ定量的にペンタセンに変換することに成功した。しかし得られたペンタセンは、光照射により酸素付加体が生じやすく空気中では不安定であった。また、ジケトン前駆体とペンタセンの吸収スペクトルが一部重なっているため、フィルム中での反応では、反応後半にペンタセンのフィルター効果によってジケトンの光反応が阻害されるという欠点があった。今回我々は、有機半導体化合物として知られるテトラセンや種々のチオフェン連結アントラセン誘導体のジケトン前駆体の合成を行い、その光反応性について検討した。その結果、2,6-ビスチオフェン修飾アントラセンは、ペンタセンに比べて酸素に対して安定であり、大気中でも定量的に反応が進行することを明らかにした。またアントラセン部分の吸収がジケトンのn-π*遷移に比べて短波長側であるため、フィルター効果による反応の阻害がないことから、溶液あるいはフィルム中で、反応を効率よく進行させることが可能であった。一方アントラセンのジケトン前駆体にチオフェンダイマーを連結させると、π共役の拡張によりジケトンのn-π*遷移とπ-π*遷移が重なってしまい、光反応が効率よく進行しないことも明らかにした。またペンタセンやテトラセンのジケトン前駆体の光反応時に観測される鮮やかな発光のメカニズムを解明するために、光照射を行いながら吸収及び発光スペクトルを測定したところ、その発光は化学発光やリン光ではなく、ペンタセンあるいはテトラセンからの蛍光であることを明らかにした。
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