研究概要 |
ペンタセンに代表されるアセン類は,代表的なp型有機半導体であるが,通常の溶媒に難溶であるためデバイス作製には真空蒸着を必要とする.我々は溶液プロセスによるデバイス作製を可能にするため,光により変換可能なアセン型有機半導体の可溶性前駆体を設計した. 今年度我々は,酸素に安定な有機半導体として,長鎖アルキル基を有するチオフェン縮環アントラセン誘導体やチオフェン連結アントラセンのジケトン前駆体の大量合成を行い,溶液塗布によるOTFTを作成し,その性能を評価した.また種々のピレン連結アントラセンのジケトン前駆体を合成し,分子内アンテナ効果と光反応性について詳細に検討した.さらに,光反応を利用した高次π共役拡張アセン類の合成に向けて合成法を検討中である.例えばノナセンは,大気下では極めて不安定であり,また難溶性であるためこれまでに報告例がないが,我々の開発した前駆体を利用することで,光反応によりフィルム中でノナセンに変換することが期待できる.このような高次π共役拡張分子の中間体の合成に成功した. 一方,ベンゾポルフィリン類は優れた有機半導体として知られており,愛媛大では熱変換型の前駆体を利用した溶液塗布による有機半導体薄膜の作成と半導体特性をこれまでに報告した.今年度我々は,モノベンゾポルフィリンのジケトン前駆体を合成し,光反応性について検討した.特に,前年度に得られたモノアンスラポルフィリンのジケトン前駆体との光反応性の違いについて詳細に比較検討した.
|