研究概要 |
オルトーシリル封鎖フェロセンをブチルリチウムと反応させると,予想に反してフェロセンのシクロペンタジエニル基と側鎖置換基のフェニル基のオルト位の両方にリチオ化反応が進行することが判明した。中間体はジハロゲン化物として単離され,ハロゲン基をボスフィン基へと変換することでTaniaphos配位子が合成できた。この反応により,従来の高価なハロゲン置換されているフェニル基を用いることなく,この配位子を合成する方法が開発された。この配位子は,例えばロジウムやルテニウム金属錯体が触媒する不斉水素化反応において,有効に作用するキラル配位子であることが報告されている。中間体であるジハロゲン化物のアミノ置換基を,ナトリウムメトキシドと反応させることで,立体反転でメトキシ基に置換させることができた。このように,本反応によりTaniaphos誘導体を簡便に合成できる手法の開発に成功した。中間体のジハロゲン化物を分子内カップリングさせることで,橋かけ構造をとるキラルフェロセンが合成できた。一方,オルトーリン置換フェロセンをブチルリチウムと反応させると,上記の揚合と同様にフェロセンのシクロペンタジエニル基と側鎖置換基のフェニル基のオルト位の両方にリチオ化反応が進行し,鉄(III)触媒を加えることで分子内カップリング反応が進行した。これを,オルトーリチオ化しホスフィン配位子へと導くことに成功した。これらは"硬直した"リン-窒素配位子であり,一般的な自由に動ける配位子に比べ構造がきわめて特徴的である。これらをパラジウム錯体が触媒する不斉アリル位アルキル化反応へと応用すると,生成物が最大96%鏡像体過剰率の高い光学収率で得られた。また,アリルアミノ化反応に応用しても,90%鏡像体過剰率で対応する二級アミンが生成し,不斉合成に有効な配位子であることが示された。
|