研究課題
基盤研究(C)
置換ベンジルメチルケトン(1)および置換α-フェネチルメチルケトン(2)のオキシム誘導体のベックマン反応に関する実験は順調に進展している。化合物1の幾つかの置換体の反応速度と生成物分布を求めたところ、生成物分布と反応速度に対する置換基効果が見出された。得られた結果については、本年3月の日本化学会春季年会で報告した。本反応に関する動力学シミュレーションはほぼ修了し、明確な経路分岐の現象が見出された。現在、理論計算の結果を先行して発表すべく、投稿準備中である。置換フェニルニトロメタンのプロトン移動反応に関しては、いわゆるニトロアルカン異常性としていられているブレンステッド則における異常反応性の原因が、反応速度そのものよりも平衡定数の大きさに原因があるということを、理論計算により明らかにした。異常反応性の原因の詳細を解明するために、物理有機化学的手法によりフェニルニトロメタンの脱プロトン化反応、ならびに生じたニトロネイトへのプロトン化反応経路の検討を行ったところ、プロトン化によってニトロネイトが直接ニトロメタンを与えるのではなく、一一旦すばやくアシニトロ化合物を生じ、その後ゆっくりとニトロメタンを与えることが判明した。現在、このアシニトロ中間体の単離同定とその反応性の検討を行っている。上記2種類の反応系の他に、有機反応における反応経路分岐の現象の存在を証明するために、ベンジリデンアニリンのC=N異性化反応について、分子動力学シミュレーションを行い、経路分岐の存在を明らかにした。この結果はEur.J.Org.Chem.誌に発表した。また、異常反応性の一現象として知られているα-求核種の反応性に関する検討を行い、得られた結果をOrg.TLett.誌とChem.Eur.J.誌で発表した。この研究は、本研究課題がめざしている有機反応論の新概念の提唱の一部として重要である。
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