研究概要 |
本年度は,アンチモンおよびアルカリ金属元素を含む種々の系について新化合物の探索を中心に行った。その結果,アンチモンとインジウムを組み合わせてネットワークを構築することにより,アンチモンだけでは構築できないネットワークが生成することを見出した。まず,アルカリ金属としてリチウムを用いた系では,新化合物LiIn_2SbO_6が得られた。この化合物は,粉末X線解析により,結晶化学的にはLi^IIn^<III>(In^<III>Sb^V)O_6と表現される構造を持ち,新構造であることがわかった。いっぽう,ルビジウム,セシウムを含む系は,大きなトンネル構造をもつホランダイト型構造の新化合物A_2(In_5Sb_3)O_<16>(A=Rb,Cs)を生成した。得られたCs塩をLiClと反応させたところ,約40%のCs/Liイオン交換が起こり,それとともに格子定数が減少した。また,イオン伝導性を示すCole-Coleプロットが得られ,イオン交換性とともに,大きなトンネル中でアルカリ金属イオンが移動することが示された。ホランダイト型構造の化合物の多くは,チタン,マンガン等の遷移金属元素を骨格要素として持ち,pブロック元素のみで構成されるホランダイト型構造化合物は,本化合物がはじめてであると思われる。このことから,pブロック元素を組み合わせることにより,遷移金属元素でのみ得られていたネットワーク構造が実現できる可能性が示され,新たな化合物群の存在が予想される。ただし,酸化数の観点から考えると,Sb^V+In^<III>は,2個のSn^<IV>に構造化学的には置換可能であると考えられるにもかかわらず,A_2(In_5Sb_3)O_<16>から存在が予測されるA_2(In_2Sn_6)O_<16>の合成は成功せず,アルカリ金属-pブロック酸化物系の化学が必ずしも単純でないことも示された。
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