研究概要 |
アンチモンとインジウムを含むネットワーク構造を探索し,新化合物LiIn_2SbO_6を合成した。粉末X線回折測定および中性子回折の測定し,Rietveld解析によりその結晶構造を決定した結果,この構造が乱れのない構造であること,また,リチウムの存在するサイトの空間が予想ほど大きくないことがわかった。いっぽう,カリウムなどのより大きなアルカリ金属イオンを用いることにより,アンチモンーインジウム酸化物系ネットワークにより,より大きなトンネル構造を持つホランダイト型アンチモン酸塩を合成できることがわかった。このホランダイト型ネットワークには,インジウムだけではなく,遷移金属も組み込めることがわかった。また,大きな空隙をもつ新たなアンチモン酸塩として,パイロクロア類似型構造に着目し,ASbWO_6型酸化物(A:アルカリ金属)の系について探索を行ったところ,AがNaの場合についてパイロクロア型ではなく新構造の化合物が得られた。本組成の化合物は文献では立方晶パイロクロア型および斜方晶の構造が報告されているにもかかわらず,Rietveld法による構造解析の結果では,斜方晶系のLiSbWO_6と類似する構造であるが,わずかにゆがんだ単斜晶系と考えられることがわかった。また,AがLiの場合には,文献で報告されている構造とは異なりパイロクロア類似型構造の化合物が得られた。これらの実験結果は,合成反応によって得られるアンチモンを含む酸化物ネットワークの構造は,必ずしも熱力学的に安定な結晶構造ではないこと,さらに合成法を適切に選ぶことができれば,広い範囲にわたる結晶構造を構築できることを示唆している。
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