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2007 年度 実績報告書

強発光性遷移金属錯体のための分子設計指針

研究課題

研究課題/領域番号 18550054
研究機関富山大学

研究代表者

野崎 浩一  富山大学, 理工学研究部(理学), 教授 (20212128)

キーワード遷移金属錯体 / リン光 / MLCT / スピン軌道結合 / dd状態
研究概要

青色発光を示す遷移金属錯体の設計は、環在のリン光性有機EL素子の開発における重要な課題である。強リン光性イリジウム錯体の発光の高エネルギー化を目的として、しばしばビラゾール配位子が導入されているが、この配位を有するイリジウム錯体は室温で発光寿命が著しく短くなる傾向がある。そこで本研究では、リン光状態の失活機構の解明を目的として、2つのピラゾール配位結合を有するイリジウム錯体の発光寿命を広い温度範囲で観測し、失活過程の頻度因子や活性化エネルギーを決定した。その結果から、発光性のリン光状態は、それよりもエネルギー的に高い位置にあるdd状態を熱的に経由して失活していることを明らかにした。
従来リン光状態のdd状態を経由する熱失活機構については、ルテニウム(II)ポリピリジン錯体について詳細に検討されていた。しかし、dd状態を分光学的に観測することが困難であるために、その反応経路の詳細は未解明であった。そこで、密度汎関数理論計算によって失活経路の探査を効率よく行う手法を考案し、ピラゾール配位イリジウム錯体の発光状態の熱失活機構を詳細に検討した。この結果、リン光状態から熱的に構造変化が起こり、主にイジジウムーピラゾール配位結合が約0.6nm伸びた構造において、励起状態と基底状態のエネルギーが等しくなり、基底状態に速やかに失活することが明らかになった。また、理論計算で予測した活性化エネルギーは実測値をかなり良く再現しており、本計算の信頼性を裏付けた。これらの結果から、ピラゾール配位をもつ金属錯体は、この基の弱いσドナー性のためにdd状態が低くなり、そのため励起状態と基底状態のポテンシャルエネルギー曲面の交差がエネルギー的に低いところで起こることが、発光寿命を短くする原因であると考えられる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2008 2007

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Synthesis and Characterization of Luminescent Zinc(ll)and Cadmium(II)Colnplexes with N,S-Chelating Schiff Base Ligands2008

    • 著者名/発表者名
      Kawamoto, Tatsuya
    • 雑誌名

      Inorganic Chemistry 47

      ページ: 3095-3104

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rates of Electronic Excitation Hopping in Anisotropic Ionic Crystals of [Ru(2,2'-bipyrldine)_3]X_2(X=ClO_4^-,PF_6^-,SbF_6^-);Monte Carlo Simulation of Single-and Multi-Exponelltial Emission Decays2007

    • 著者名/発表者名
      Ohno, Takeshi
    • 雑誌名

      Inorganic Chemistry 46

      ページ: 8859-8870

    • 査読あり
  • [学会発表] ピラゾールが配位したイリジウム(III)錯体の発光状態の熱失活機構の解明2008

    • 著者名/発表者名
      野崎浩一
    • 学会等名
      日本化学会春期年会
    • 発表場所
      立教大学
    • 年月日
      2008-03-26
    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [学会発表] Theoretical studies on thermal deactivation mechanism of MLCT state in[Ru(terpy)_2]^<2+>(terpy=2,2':6,2"-terpyridine)2007

    • 著者名/発表者名
      Nozaki, Koichi
    • 学会等名
      17th International Symposium on the Photochemistry and Photophysics of Coordinat ion Compounds
    • 発表場所
      Dubhn,Ireland
    • 年月日
      20070624-28
  • [図書] 遷移金属錯体の光化学2007

    • 著者名/発表者名
      佐々木 陽一
    • 総ページ数
      348
    • 出版者
      三共出版

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公開日: 2010-02-04   更新日: 2016-04-21  

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