研究概要 |
地球規模での環境保全,国際貿易,健康と安全に関わる分析値の質の保証が国際的に重要な課題となっており,様々な無機・有機物質に対してSIトレーサビリティが証明された信頼性の高い分析法が必要である。本研究では,定量目的成分として生体・環境関連物質の含酸素有機化合物を取り上げ,従来の基準分析法である同位体希釈質量分析に代わる新規な絶対定量法として,不足当量NMR分析法を開発する。信頼性評価のために分析法バリデーションを行い,有用性を明らかにする。 1)フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP),ジメチルスルホキシド(DMSO),ポリエチレングリコール400ジメチルエーテル(PEG),ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(TX100)を取り上げ,Eu(III)とPr(III)のヘキサフルオロアセチルアセトン(Hhfa)錯体との付加錯体生成を溶媒抽出法を用いて研究した。DEHP,DMSO,TX100は,いずれも1:1と1:2付加錯体を生成し,PEG400は1:1錯体のみを形成することが分かり,それぞれの生成定数を決定した。これらの有機化合物とランタニド錯体を共存させ1H-NMRスペクトルを測定し,溶媒抽出の結果を考慮して解析し,付加錯体生成定数を求めた。 2)ランタニド錯体による有機化合物の1H NMRの化学シフト変化を利用した新規な絶対定量法を提案した。DMSOをモデル試料としEu(hfa)_3による不足当量錯形成の最適条件を検討し,定量法の精度・正確さについて評価した。試料溶液に不足一定量のEu(hfa)_3を加え,既知量のDMSOあるいはDMSO-d_6をスパイクすることにより,未知量のDMSO濃度を提案した定量式に基づき決定した。定量値は相対標準偏差が0.8-2.1%、相対誤差が0.2-1.5%であり,検量線なしで精度良く正確に定量できることを示した。
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