研究概要 |
負電荷を持つ窒素原子をLewis電子対ドナーとして用いるスルホンアミド型キレート試薬の抽出試薬としての機能解析を目的として,以下のような基礎的研究を行った。 1β-ケトエノール型キレート抽出試薬のエノール型-OH基をスルホンアミド基(-NHSO_2R)に置換した場合の効果を評価するため,2-ヒドロキシベンゾフェノンの-OH基を-NHSO_2R基に置換したところ,2価銅イオン(Cu^<2+>)の抽出能が顕著に低下した。これに対し,ケト基(=O)を=NR'基に置換した類縁体の場合には,スルホンアミド化による抽出能の増大が見られた。さらに,R'の末端に-OH基を導入すると抽出能はさらに向上した。この結果より,スルホンアミド型キレート試薬の特性は,当該部位以外のLewis電子対ドナーの選択によって大きく変化しうることが示された。 2イオン液体(IL)を抽出相として用いるILキレート抽出系における抽出試薬としてのスルホンアミド型キレート試薬の利用可能性を探索するため,8-スルホンアミドキノリン誘導体を用いた場合の2価金属イオンの抽出挙動を検討した。既存の有機溶媒を用いた場合と比較して,IL系では抽出能が増大し,この型の試薬がILキレート抽出系に有用であることが示された。また,-NHSO_2R基においてR=CF_3とした場合,サイズの小さい金属イオンでは錯形成時の立体障害に起因する抽出能の低下が見られたのに対し,かさ高い金属イオンの場合はCF_3-基とILとの親和性の効果により1:3陰イオン性錯体がイオン交換により優先的に抽出され,結果として抽出選択性に変化が現れた。すなわち,スルホンアミド型キレート試薬を用いるILキレート抽出系では,隣接置換基による選択性制御が可能であると示唆された。
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