研究概要 |
1.マロノニトリル,N,N-ジプロピル-L-アラニン,2,5-ジメチルチオフェンがトリス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム錯体(以下Ru錯体)と強い発光反応を起こすことを確認した。そこで,Ru錯体電気化学発光イムノアッセイシステムなどに利用され,最も効率のよい還元剤とされる脂肪族第三アミンのトリプロピルアミン(TPA)とこれらの物質の比較を行った。電極素材など様々な条件を変更して実験を行ったが,TPAを超えるものは見出せなかった。しかしN,N-ジプロピル-L-アラニンに関しては,感度面でTPAに匹敵し,常温で固体,水溶液が中性であるなどの点でより利用しやすい有用な還元剤であることが確認された。 2.1で得られた結果の応用として,新たに(2,4,5-Trimethyl-3-thienyl)acetic acidをフェノールやアルコールに対するRu錯体発光検出用誘導体化試薬として合成した。アルキルフェノールおよびビスフェノールAの13種混合溶液をこの誘導体化試薬を用いてHPLCで測定したところ,ppbレベルの検出,高分離,過剰試薬の容易な分離が可能であることが確認された。 3.Ru錯体化学発光検出法の環境分析への応用として,リン酸イオン分析法を開発した。酸性条件下でリン酸イオンをモリブデン酸イオンと反応させてモリブドリン酸錯体とした後,脂肪族第三アミンとイオン対を生成させた。このイオン対を(1)溶媒抽出,(2)メンブレンフィルター捕集により分離し,イオン対に含まれる脂肪族第三アミンをRu錯体化学発光法で測定することで間接的にリン酸イオンを定量した。(1)は塩濃度の高い海水試料には適用できなかったが,(2)は海水試料にも適用可能であった。
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