研究概要 |
本研究では,シリカ表面に吸着させた塩化セチルトリメチルアンモニウムの逆ミセル(以下,これを吸着逆ミセルと称す)の界面相を特異なミクロ反応場として利用して,その表面に界面重合反応により6,6-ナイロンなどのホリアミドを合成し,形成されたポリアミド層のナノ構造体を分離の新規なメディアとして活用することをめざしている。平成18年度はその合成法の検討とともに基礎的研究を主体として行い,以下のような研究成果を得た。 (1)吸着逆ミセル界面でのホリアミド合成の最適条件の検討:逆ミセル内水相に分散されたジアミンの水酸化ナトリウム水溶液を,シリカゲル表面に運搬,吸着,保持させ,その挙動を明らかにした。逆ミセル吸着ナノ界面においてバルク有機相中の二塩化アシルとの重合反応を起こさせ,その表面にポリアミドを合成する新規な方法について検討した。生成したナイロンは溶解後,赤外吸収スペクトル測定を行って確認し,その重合度をGPC測定により求めた。それらの結果をもとに本合成法の最適条件を決定した。 (2)形成されたポリアミドのナノ構造と特異性の解明:本法でガラス表面に合成したナイロンの形状を原子間力顕微鏡で観測した。さらにテトラフェニルポルフィン(TPP)の錯体を用いてHPLC分離の固定相としての特性を検討した結果,シリカゲルのみの固定相とは異なり,銅と亜鉛のTPP錯体が分離されて溶出する条件で,TPP自身は強く保持され溶出しないことが分かった。また,保持されたときTPPは緑色に変化し,プロトン付加が同時に起こることを顕微分光法により明らかにした。このような保持は通常の界面重合法で合成したナイロンでは観測されない特異な挙動である。さらに,ある特定の濃度(臨界濃度)以上のエタノールを溶離液に添加するとTPPが溶出してくることを見いだした。またエタノールを臨界濃度以下に低下するとTPPの保持が再現されることも確認した。
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