研究概要 |
本研究では,シリカ表面に吸着させた塩化セチルトリメチルアンモニウムの逆ミセル(以下,これを吸着逆ミセルと称す)の界面相を,ナイロン-6,6などのポリアミドを合成するための特異なナノ反応場として利用すること,さらに調製したポリアミド層を分離の新規なメディアとして活用することをめざした。まず,その合成法の検討とともに界面反応場に関する基礎的研究を行い,次に,得られた知見をもとに,そのポリアミド層を固定相とするLC分離法に関して検討し,以下のような研究成果を得た。 (1)吸着逆ミセル界面でのポリアミド合成の最適条件の検討:ジアミンの水酸化ナトリウム水溶液を逆ミセルに分散させて,シリカゲル表面に運搬,吸着,保持させ,その逆ミセル吸着ナノ界面でのジアミンと二塩化アシルとの重合反応により,ポリアミドをシリカ表面に合成することに成功した。生成量はTGA測定により,また重合度は生成したナイロンを溶解してGPC測定により求め,それらの結果をもとに本合成法の最適条件を決定した。 (2)形成されたポリアミドのナノ構造と特異性の解明:本法によりシリカゲルの細孔内にほぼ均一にナイロンが形成されることをTEM測定にて確認した。さらに,原子間力顕微鏡観測を行い,本法によりガラス表面に合成したナイロンは,その表面に垂直な方向にポリマー鎖が伸びたブラシ構造をもつ,高さ20〜100nm,直径100〜500nmのナイクラスターとして形成されることを明らかにした。 (3)ポリアミド被覆固定相によるLC分離特性の検討:本法により調製したナイロン被覆シリカゲルを固定相として用いたLC法を,ニトロアニソールのo,m,p-異性体の分離に用い,その分離特性について調べた。その結果から,ポリアミドのNH部位が親水的であることを明らかにした。さらに,その固定相を親水性の糖類の分離に適用し,LC分離機構について考察した。
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