研究概要 |
本研究課題"水素ラジカルによる特異な分解反応の制御に関する基礎研究"は、申請者がその現象を発見し原理を解明した下記の成果に基づいている。すなわち、真空中での窒素レーザー光照射による水素ラジカルを発生させ、その水素ラジカルがタンパク質と結合するとペプチド主鎖(-CHR-CO-NH-CHR-)のカルボニル酸素と結合し、アミド結合(NH-CHR)を特異的に分解する(J.Am.Soc.Mass Spectrom.,12,1044(2001))。その機構は現在、水素ラジカル機構としてタンパク質のアミノ酸配列解析に応用され、主要な国際学術専門誌、国際学会、専門書等に引用されている(Chem.Rev.103,427(2003); Anal.Chem.77,172(2005); ASMS Conference,WOA,USA(2007);F.Hillenkamp:"MALDI MS",Wiley-VCH(2007);Mass Spectrom.Rev.,26,672(2007)など)。本研究では、"水"と"超音波"を組み合わせ、安価で安全な新たな水素ラジカル発生法の探索、水素ラジカル反応の評価系の確立、新規反応の探索を目的として以下の成果を得た。1.水のみではヒドロキシラジカル(HO・)による酸化反応が優先したが、水素ラジカル発生試薬を添加すると加水分解が優先した(論文発表準備中)。2.反応評価試薬としてペプチドACTH18-39が適すること、その評価解析システムにはレーザー脱離イオン化質量分析が適することを確立した。3.分解反応による微量生成物の質量分析計測の際、セリンを添加するとシグナル強度(S/N)が10〜100倍に増強する現象を発見した。以上の成果は、学会発表および国際学術専門誌に発表することができた。
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