本年度は、(1)マイクロチャネルの設計・作製、(2)試料導入方法、および(3)試作機の作製に取り組んた。 (1)マイクロチャネルの設計・作製:マイクロチャネルを組み込んだガラスとPDMSとの複合チップに試料溶液、反応試薬溶液、洗浄液を送液するためのインターフェイスについて、引き続き検討した。特に、安定した送液のためには、マイクロチャネル内壁の疎水性・親水性を制御する必要があることが分かった。そこで、前処理として適当なタンパク質を内壁表面にあらかじめ吸着させておくと、送液が円滑に行えることが分かった。ただし、吸着したタンパク質が蛍光検出や抗原抗体反応を妨害する現象が見られたため、タンパク質の種類や濃度など最適な条件についてはさらに引き続き検討が必要であることが分かった。 (2)試料導入方法:唾液採取法について昨年度から引き続き検討した。唾液中の目的高分子成分が唾液採取用器具の素材に吸着して回収率が落ちてしまうという問題について、唾液採取用器具の種類を検討した結果、回収率を向上することに成功した。唾液試料をマイクロチャンネルへ導入する際に問題となる、試料そのものの粘度や気泡の影響については取り除くことが困難であった。引き続き次年度への検討課題とする。 (3)試作機の作製:個々に開発したマイクロチャンネルチップ、試料採取チップ、光学系、送液系などの機能モジュールを組み合わせた分析システムの試作を目指し、構造や材料などの設計に着手した。始めは、個々のモジュールを組み合わせることができるかどうかの検証を行い、その後、サイズや形状などの最適化に結び付けることを計画した。
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