研究課題/領域番号 |
18550084
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
平出 哲也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主幹 (10343899)
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研究分担者 |
鈴木 健訓 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 大強度陽子加速器計画推進部, 教授 (40162961)
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キーワード | 陽電子 / ポジトロニウム / 陽電子消滅寿命 / 水 / イオン液体 |
研究概要 |
1.前年度、陽電子入射を透過型アバランシェフォトダイオード(API))を用いて検出する陽電子消滅寿命測定装置を構築し、陽電子の検出効率が50%以上で、2個以上の陽電子が入射するため発生する、所謂ランダム同時計数によるバックグラウンドを低減可能であることを示した。今年度、さらに研究を進め、Ge-68からの陽電子の検出効率は61%であることがわかった。解析プログラムにより、測定レンジ内に2つ以上入射された陽電子は、1ナノ秒程度以上の時間差であれば検出可能であり、解析時に除外することで、40%のバックグラウンドを低減する事に成功した。 2.生体物質においては水の存在によっていろいろな機能性が現れる。重要と考えられる現象には水素結合やイオンなどの水和(溶媒和)がある。水は多くの物質の中でおそらく最も溶媒和が速い物質であり、陽電子挙動への溶媒和の効果を解明するために水より溶媒和の遅い物質を用いる必要がある。イオン液体中では溶媒和が遅いという報告があり、溶媒和過程の陽電子挙動への影響を研究するのに適した系と言える。そこで、イオン液体中の陽電子寿命と消滅γ線エネルギーの相関測定を行った。その結果、ポジトロニウム(電子と陽電子の結合状態)形成には溶媒和過程が大きく影響していることが明らかとなった。 3.低温域で陽電子消滅法の測定を行うと陽電子の照射効果で捕捉電子が蓄積されるが、陽電子はこれら捕捉電子を捕捉サイトから引き抜いてポジトロニウム形成が可能である。この形成過程は室温以上、特に水などの液体中の過程と異なり、この過程で形成されるポジトロニウムは周囲に陽イオンや過剰電子などの活性種が存在しない。これら環境の異なるポジトロニウムを比較することで、従来は議論が難しかった、複雑な反応過程を明らかにすることが可能となる。そのための基礎的な実験を開始した。
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