本研究では有機金属触媒を用いて、従来合成できなかった新規多環性ヌクレオシドの合成とそのオリゴライブラリーの創成を目的としている。その修飾したヌクレオシドの抗癌性、抗ウイルス性、抗マラリア性などの生理活性、または機能性も期待される。具体的5-ヨードデオキシチジン(5-I-dC)や5-ヨードデオキシウリジミン(5-I-dU)などを原料として、Sonogashira反応によってこれらのフェニルアセチレン誘導体を効率よく合成できた。得られたヌクレオシドのアセチレン誘導体を一酸化炭素の雰囲気下ロジウムカルボニル触媒によるカルボニル化反応を行った。一酸化炭素の圧、反応溶媒、反応温度などを検討した。反応したものの、選択性が悪い。触媒をルテニウムカルボニルや鉄カルボニルを変えて、また、種々なアミン添加剤を入れて、触媒の活性を調べた。その結果、修飾ヌクレオシドの環化カルボニル化反応は普通のフェニルアセチレン誘導体の環化カルボニル化反応と異なり、ヌクレオシドの水酸基やヌクレオシドの塩基も反応に障害したことが分かった。水酸基の場合には保護基で保護すれば、解決できたが、ヌクレオシド塩基の障害が避けられなかった。目的物が確認されたにもかかわらず単離できなかった。今後、これまでの経験を生かして、修飾ヌクレオシドの種類を変えて、天然のグアニン、アデニン、シトシン、チミン、ウラシンの代わりにフェニルアセチレンを五員環糖と直接結合し、天然ヌクレオシド塩基の障害を防ぎ、より選択的、効率的環化カルボニル化生成物が得られると期待している。また、機能性DNAを合成の一環として、遷移金属イオンと修飾ヌクレオシドの反応も検討した。ビピリジンで修飾したウリジンの合成に成功し、さらに合成した修飾DNAを銅イオンと反応させて、銅イオン一つが取り込まれたことを見いだした。この成果を第88日本化学春年会で発表した。
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