本研究の目的は、架橋シロキサンゲルを触媒的に構築すると同時に触媒を自己カプセル化し、生成した「金属内包シロキサンゲル」を触媒として用いることで高選択的反応を達成すると共に、生成物の分離と触媒の回収、ならびに再利用が容易でスケールアップ可能な実践的不斉触媒反応の実現を図ることである。 昨年度、3核ルテニウムカルボニル錯体存在下、架橋剤にジオール、残存Si-Hのキャッピング剤にモノオールを用い、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)の脱水素シリル化反応で新規Ru内包ゲル([Ru_3]@Si_<cap>)の合成と、アリルエーテル類の異性化反応を基盤とする簡便な脱保護反応を確立した。本年度は、この([Ru_3]@Si_<cap>の応用として、(1)光学活性エーテルの不斉中心を保持したままの脱保護の達成と、(2)アリルプレニルエーテルのアリル基選択的異性化によるクライゼン基質の選択的合成と、引き続くMe_3A1によるAlkylative Claisen反応を達成した(論文投稿中)。さらに酸素架橋Ru内包ゲル([Ru_3]@Si-0)による2級アミドからの還元的N-アルキル化(2量化)による3級アミンの効率的合成を達成した(論文発表)。一方、Karstedt's触媒存在下、ジエンを架橋剤とするヒドロシリル化により白金内包ゲル(Pt@Si)の合成法を確立し、芳香族ニトロ化合物のニトロ基選択的還元反応を、穏和な条件下、生成物中への金属溶出なく、グラムスケールにも対応できる再利用可能なプロセスとして達成した。特に脱ハロゲン化が問題となるハロニトロ化合物のニトロ基選択的還元は、ゲルの特長である「内部修飾」を用い、ゲル内部にアミノ基を組込んだ新規Pt@Si-N触媒を用いることで、高ニトロ基選択的反応を達成した(論文作成中)。また、IrCl(CO)(PPh_3)錯体による3級アミドの還元/脱水反応において、新規で効率的なエナミン合成反応を開発すると共に、Ir内包酸素架橋ゲル(Ir@Si-0)が生成することを見出した(論文作成中)。
|