研究概要 |
申請者が見出したカテコール-銅-酸素分子配列を組み込んだ新しいPd^<+2>触媒系をシンナミルアルコールのビニルエーテルへのオキシパラジウム化とそれに続く環化反応に適用した.その結果,シンナミルアルコールとエチルビニルエーテルの反応から2-エトキシ-4-ベンジリデンテトラヒドロフラン体が効率的に合成できることを見出した.その要点は,Pd^<+2>/Cu^<+2>触媒の使用量を5mol%以下とし,パラジウムのクラスター化を避けることにある.この手法により,cis-シンナミルアルコールからは石体配置の2-エトキシ-4-ベンジリデンテトラヒドロフランが,一方trans-シンナミルアルコールからは対応する2体が選択的かつ効率よく合成できることを認めた.入手容易なアリルアルコールそれ自身とブチルビニルエーテルとの反応からは,この型の化合物の基本骨格となる4-エキソメチレン2-ブトキシテトラヒドロフラン体が容易に合成できることも分かった. これらの化合物のヒト白血病U937細胞に対する細胞増殖阻害活性を,細胞生化学者と共同して調査した.その結果,この型の化合物の基本となる4-エキソメチレン2-ブトキシテトラヒドロフラン体は,ほとんどその活性を示さないことが分かった.また,4-ベンジリデン基にニトロ基を導入した2-ブトキシ-4-ニトロベンジリデンテトラヒドロフランは,ニトロ基を持たない化合物に比べて,より強い活性を示すことも判明した.これらの成果は,動物実験や臨床試験に供することができる有用抗がん剤のリード化合物探索の基礎データとなる.
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