研究概要 |
カテコール-銅-酸素分子の配列を用いたPd^<+2>触媒の新しい活性化法により,シンナミルアルコールをビニルエーテルに反応させ,種々の2-アルコキシ-4-ベンジリデンテトラヒドロフラン誘導体の効率的合成法を確立した。この反応の有効性を高めるために,反応基質となるビニルエーテルの合成法についても検討した。その結果,イリジウム触媒存在下で種々のアルコールを酢酸ビニルに反応させる石井法が,これらのビニルエーテル合成に効果的であることが分かった。さらに,鉄(III)触媒を用いて2-アルコキシ-4-ベンジリデンテトラヒドロフラン体と種々のアルコールを反応させる手法により,2-エトキシ基を2-アルコキシ基に変換させるアセタール交換反応を開発した。これらの手法を併用すると,広範囲な2-アルコキシテトラヒドロフラン誘導体が容易に入手できることが判明した。本研究では,これらの2-アルコキシ-4-ベンジリデンテトラヒドロフラン体がヒト白血病細胞に対して抗がん作用を持つことを,細胞生化学者と共同して検証している。これまでに,2-ブトキシ-4-ベンジリデンテトラヒドロフランはヒト白血病細胞U937の増殖阻害を引き起こすこと,さらに,この化合物はアポトーシス誘導活性を持つことを認めている。本年度の研究では,上記の種々の2-アルコキシテトラヒドロフラン体の2-アルコキシ基のアルキル基の長さがU937細胞膜への透過性と相関することを認めた。
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