研究概要 |
タンタルおよびニオブを中心金属として、様々な置換基を有するモノおよびビス(フェノキシ)錯体,MCl_<5+n>(OC_6H_3R_2-2,6)_n(M=Ta,Nb;n=1,2;R=H,Me,^iPr,Ph),を系統的に合成し,それらの錯体に種々のアルキルアルミニウム化合物R'_3Al(R'=Me,Et,^iBu,Oct)を助触媒として加えた系のノルボルネンの開環メタセシス重合(ROMP)に対する触媒作用を検討した. フェノキシタンタル錯体は、助触媒としてOct_3Al,^iBu_3Alを用いることによりノルボルネンのROMPに対して高い活性を示し,3分程度の重合時間で定量的にポリマーが得られた.モノフェノキシタンタル錯体はビス(フェノキシ)タンタル錯体よりも高活性を示し、モノフェノキシタンタル錯体を用いた重合では,触媒活性はフェノキシ配位子上の2,6-位の置換基がH>Me>^iPr>Phの順となり,配位子がかさ高くなるにつれて活性が低下した. ニオブ錯体系は,タンタル錯体系とは異なり,助触媒にMe_3Alを用いた場合に極めて高い活性を示し,300当量のノルボルネンの重合が1分で完了し,分子量数10万〜100万の高分子量ポリマーを与えることを見出した.モノフェノキシニオブ錯体を用いた重合では,触媒活性はフェノキシ配位子上の2,6-位の置換基がPh>^iPr>Me>Hの順となり,配位子がかさ高くなるにつれて活性が上昇した.このように中心金属の違いによって助触媒や配位子の置換基の影響が全く異なることが明らかになった。 これらの触媒系は,現在までに報告されているタンタルやニオブを中心金属とするROMP触媒系では最も高活性である。ROMP触媒として良く用いられる6族遷移金属触媒系と比較しても同等以上の活性であり、新しい高活性ROMP触媒系の開発に成功したといえる。
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